— 軽さと動画の快適さ、でも“40mm止まり”は要検討 —
結論
軽量コンパクトで取り回しが抜群です。α7C IIとの相性はとても良く、特に動画では20mmの優位性が光ります。一方で静止画中心で「標準域70mmまで欲しい」方には物足りなさが残るはずです。画質は中央の解像感が高く、線が細く柔らかい表現が得意です。開放では四隅の粗さが見えるので、作品撮りでは一段〜二段絞ると安心です。絞りリングがない点は操作面のマイナスでした。私はのちにFE24-70mm F2.8 GM IIを購入し、本レンズは売却しています。写真メインでは焦点距離は広いほうが使いやすいと感じました。

TAMRON 20-40mm F/2.8 Di III VXD(A062)主な仕様
対応マウント | Sony E(フルサイズ対応) |
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焦点距離 | 20–40mm |
開放絞り | F2.8(通し) |
最小絞り | F22 |
絞り羽根 | 9枚(円形絞り) |
レンズ構成 | 11群12枚 |
最短撮影距離 | 0.17m(広角)/0.29m(望遠) |
最大撮影倍率 | 1:3.8(広角)/1:5.1(望遠) ≒ 0.26倍(広角時) |
フィルター径 | 67mm |
最大径 × 長さ | Φ74.4 × 86.5mm |
質量 | 約365g |
AF駆動 | VXD(リニアモーター) |
手ブレ補正 | なし(ボディ内補正を使用) |
防塵防滴 | 簡易防滴構造 |
コーティング | BBAR-G2、前玉フッ素コート |
ソフト対応 | TAMRON Lens Utility(USB Type-C接続) |
ズームリング回転角 | 約65° |
発売日(Eマウント) | 2022年10月27日 |
購入の背景と使用環境
- カメラ:Sony α7C II
- 私にとって最初に買った交換レンズです。主に風景とペット撮影、たまに動画くらいで使いました。
- 普段よく使う画角は35〜70mmということが後にわかりました。そのため望遠端が40mm止まりなのが物足りなく感じました。
外観・取り回し:小型ボディにしっくり
第一印象は「スペックの割に軽量コンパクト」です。α7C IIの小型ボディと組むとフロントヘビーにならず、長時間の撮影でも疲れにくいです。ズームリングのトルクは軽すぎず重すぎずで、さっと画角を変えたい動画でもストレスがありませんでした。
気になったのは絞りリング非搭載です。私は絞り優先の撮り方が多く、左手で焦点距離と絞りリングをテンポよく調整できるのが、撮影時に快適でした。どのようなアングルに構えていても、リング操作は操作しやすいことも良い点です。ここは取り回しという面でマイナスでした。
画質レビュー:中央は高解像、四隅は開放で粗さ。描写は「線が細く柔らかい」
静止画の印象を一言でまとめるなら、細い線で輪郭を描くような柔らかさです。解像していないわけではなく、むしろ中央はよく解像します。ただ、エッジをガチッと固めるタイプではなく、微妙なグラデーションや人肌の階調をすっと出す方向性で、いわば“キレキレよりもしなやか”です。
- 開放F2.8:中央は十分シャープですが、四隅はやや粗く甘めです。建物の角や看板の細字を見ると差が分かります。
- F4〜F5.6:均質性が一気に改善します。スナップ中心ならこのあたりで使うと安心です。
- F8:端まで整ってきますが、GM系の切り絵のような端のキレと比べると控えめです。用途によっては十分ながら、“最高峰のカリカリ感”を求める方には届かない印象です。
発色はややオレンジ寄りに感じました。特に夕景や室内電球色では、SONY純正レンズと比較すると、ほんのり暖色方向へ転びます。純正レンズと色を合わせるならホワイトバランスの色温度を気持ち下げるなど、調整は必要に感じます。
AF・操作感:十分に速く静か、ただしGM IIほどの瞬発力ではない
VXD駆動のAFは実用上は十分に速く静かです。歩いてくる人物の瞳AFや、手前→奥のラックでも迷いは少ないです。とはいえFE24-70mm F2.8 GM IIと比べると一歩譲る場面があり、特に暗所・コントラスト低めのシーンで差を感じました。静止画の歩留まりに致命的な差はありませんが、スポーツや動体メインなら上位レンズのアドバンテージを意識します。
動画適性:画角が使いやすい。手ブレ補正は要工夫
20mmスタートは自撮り・Vlog・室内撮影で使い勝手が良く、24〜35mmあたりは引きのBロール、40mmは寄りのカットに合います。ズーム全域でF2.8通しなので、絞り値を変えずに明るさを稼ぎつつテンポよく画角を切り替えられます。
本レンズレンズ側の手ブレ補正非搭載です。α7C IIのボディ内手ブレ補正に頼る形になり、純正レンズとの比較では補正の効きが弱く感じることがありました。純正レンズ以外は総じて手ブレ補正は効きにくいので、手ブレ補正を重視する場合は純正レンズを買うしかない状況です。
AF移行は概ね滑らかで、顔→物→顔のスイッチも自然です。ブリージングは気にすべきほどではないものの、厳密なカットでは気づく程度という印象です。ボディのブリージング補正は使えないので注意が必要です。
焦点域と運用:私は“35〜70派”。40mm止まりの物足りなさ
私の常用が35〜70mmということもあり、40mmで届かない場面が少なくありませんでした。人物撮影は50mm以上で撮りたいところです。被写体から離れられない場合には、広角が輝くので、そういう状況が多い方はいいかもしれません。
結果として、レンズ交換を減らしたくて24-70mm F2.8 GM IIに一本化しました。撮影のテンポは明らかに良くなり、こちらを主軸にしたため、A062は出番が減って売却という選択に至りました。
どんな人に向いている?/向いていない?
向いている方
- 旅行や街歩きで軽快に撮りたい方
- 動画撮影が多い方(自撮りや引きの画が多い)
- 作品よりもスナップ中心で、開放の四隅に過度にシビアでない方
- 線が細く柔らかい描写が好みで、人肌をしっとり出したい方
向いていない方
- レンズ一本で70mmまで完結させたい方
- 端から端までキレ味最優先の方(特に開放)
- 絞りリング操作が必須で、動画オペも“物理リング派”の方
代替・比較の視点
- Sony 24-70mm F2.8 GM II:万能です。重さと価格のハードルはあるものの、「レンズ交換したくない」派には最適解に近いです。描写は端まで安定、AFも俊敏、絞りリング搭載で動画の露出制御も楽です。
- 本レンズ(20-40mm F2.8):軽さと動画のしやすさで選ぶ一本です。静止画メインでも、広角〜準標準までで完結する方にはハマります。
まとめ
TAMRON 20-40mm F/2.8 Di III VXDは、軽快さ・動画適性・扱いやすい価格感で“初めての一本”としても有力だと感じました。描写は中央がよく解像しつつ、線が細く柔らかな表現が得意で、人肌やスナップに向きます。反面、開放の四隅は粗さが出るため、作品撮りではF4〜F5.6あたりに絞る運用が現実的です。私のように35〜70mmが主戦場だと40mm止まりがボトルネックになり、最終的にはFE 24-70mm F2.8 GM IIへ移行しました。
要は、ご自身の撮影スタイルに「20〜40mmでハマる被写体が多いか」が判断基準です。動画重視・軽快重視なら強くおすすめ、焦点距離の広さ重視なら別の選択もあり、というのが率直な結論です。
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