概要
SIGMA 35mm F1.4 DG DN Artのレンズレビューです。F1.4の世界を体験したくて購入しました。SIGMAレンズは初使用です。35mmという画角は風景や室内撮影との相性が良く、街歩きのスナップでも使いやすいと感じました。使用カメラはα7C IIです。

主要スペック
発売日 | 2021年4月27日 |
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対応マウント | ソニーEマウント(フルサイズ対応) |
焦点距離 | 35mm |
開放絞り | F1.4 |
絞り羽枚数 | 11枚(円形絞り) |
絞りリング | あり(クリック/デクリック・ロック対応) |
最短撮影距離 | 30cm |
最大撮影倍率 | 1:5.4(約0.19倍) |
フィルター径 | 67mm |
サイズ(最大径×長さ) | φ75.5×111.5mm(Eマウント) |
質量 | 約640g(Eマウント) |

外観・操作性
外装は金属パーツが多く質感がとても高いです。絞りリング、フォーカスモード切替スイッチ、AFLボタンを搭載しており、機能面は充実しています。デクリックとロックに対応した絞りリングは静止画と動画の両方で使いやすいです。質量は約640gで、α7C IIではややフロントヘビーに感じます。AF速度は最新世代の純正GMレンズと比べると体感で一歩譲る印象ですが、日常使用では問題ないレベルです。


画質について
Artラインらしく解像力とコントラストは十分で、ボケも滑らかできれいです。黄色や緑の発色が自然で、紅葉や新緑の被写体では特に好ましい色乗りに感じます。開放F1.4では画面全体がややソフトになりますが実用上大きな不満はありません。F2.8〜F4あたりが画質のピークに感じます。四隅まで画質が改善されます。α7c2の3,300万画素では本来の解像感を生かしきれないと思わせる程の余裕を感じるので、高画素機でも使っていけるレベルにあると思います。コスパという面では、非常に優秀に感じました。逆光耐性も高く、太陽を画角内に入れてもコントラストの低下は少ないです。なお、F2あたりで光条が出る特徴があるため、夜景撮影では絞り値の選択に注意が必要です。
- 軸上色収差
SIGMA 35mm F1.4 DG DN Artは、大口径レンズらしく軸上色収差(前ボケに紫、後ボケに緑のにじみ)が絞り開放では見られます。これは本レンズの数少ない弱点とも指摘されており、f/1.4では色付きのボケがかなり明瞭ですが、絞るにつれて軽減します。実写テストでも逆光の強いエッジ部に若干の色にじみ(パープルフリンジ)が確認されていますが、現像ソフトですぐ補正できる程度です。実際にはf/2でかなり低減し、f/2.8でもわずかな残存があるものの、f/4まで絞れば完全に解消します。これは多くの大口径レンズに共通する傾向なようで、仕方のないところなのかもしれません。
- 倍率色収差
倍率色収差について、SIGMA 35mm F1.4 DG DN Artは非常に優秀です。撮影画像の周辺部における色ずれはごく小さく、実写上ほとんど視認できません。またカメラ内補正や後処理で完全に解消できるレベルです。さまざまな検証結果でも評価されています。 - コマ収差
SIGMA 35mm F1.4 DG DN Artはコマ収差の補正にも優れています。メーカーは「最新の光学設計技術により、軸上色収差を含むあらゆる収差を最小化した」と謳っており、特に周辺の点光源が流れるサジタルコマフレアを開放から非常によく抑制しているとしています。星空等撮影しましたが、開放では僅かなコマ収差が残るものの、f/2.8まで絞れば完全に消失し、天体写真にも十分耐えうるレベルにあります。
- 歪曲収差
SIGMA 35mm F1.4 DG DN Artの歪曲収差は、RAW画像ではわずかなタル型歪曲が見られます。この程度なら撮影シーンによっては気付かない場合も多く、建物の直線など明確な直線が写り込む場合でも、カメラ内あるいはソフトウェアのプロファイル適用で画質劣化なく容易に補正可能です。
- 周辺減光
大口径35mmレンズとして、本レンズの周辺減光は開放では比較的強めです。f/1.4開放時に四隅で大きめの光量落ちが生じます。f/2に絞ると改善され、f/2.8でほぼ無視できるレベルにまで改善し、f/4では実質的に解消することが確認されています。JPEG撮って出しや動画撮影ではカメラ内補正が適用されますが、開放では完全には補正されません。f/2以降ではほぼ気にならなくなります。周辺減光の傾向自体は緩やかなため、ポートレートでは被写体を浮き立たせる表現などで使うなどの活用が考えられます。
- 逆光耐性
SIGMA 35mm F1.4 DG DN Artは逆光耐性が高く評価されています。レンズ構成に特殊低分散ガラスを多用し、さらにフレア・ゴースト抑制コーティング技術を投入した結果、困難な逆光条件下でもコントラスト低下やアートフレアの発生を最小限に抑えているとメーカーは謳っています。実際に使用していても、フレアやゴーストは出にくいと感じる場面は多くありました。積極的に逆光での撮影を狙っていけると感じるました。レンズ枚数の多いズームレンズを多用してる身からすると、より効果を感じるところでした。


長所/短所
- + Artラインにふさわしい高い解像力と素直な描写です。
- + 逆光耐性が良好でコントラストが保たれます。
- + 絞りリング(クリック/デクリック・ロック)とAFLボタン搭載で操作性が高いです。
- + フィルター径67mmで他レンズと共用しやすいです。
- - 最新GMレンズと比べるとAFがやや見劣りします。
- - 約640gで小型ボディではフロントヘビーになりやすいです。
- - 最短撮影距離30cmで寄りは得意ではないです。
比較
レンズ名 | 質量 | 焦点距離 | F値(絞り羽枚数) | 最大撮影倍率 |
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SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art | 約640g | 35mm | F1.4(11枚) | 約0.19倍(1:5.4) |
Sony FE 35mm F1.4 GM | 約524g | 35mm | F1.4(11枚) | 約0.23倍 |
・SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art:本レンズ
・FE 35mm F1.4 GM:比較の対象となるであろうSONY純正レンズです。軽量でAFが高速かつ静粛、最大撮影倍率がやや高いので、被写体を大きく写せます。動画撮影の手ブレ補正も効きやすいのが有利な点です。
結論
画質と外観、操作性を考えると本レンズのコストパフォーマンスは非常に高いです。解像や収差の抑え込み、逆光耐性の高さにより、風景からスナップ、室内撮影まで幅広くこなせます。紅葉の撮影では黄色や緑がきれいに出て満足のいく結果になりました。AF速度と重量、動画撮影時の手ブレ補正の点で、純正レンズに分がある場面はありますが、その点が気になる場合はFE 35mm F1.4 GMが合うと思います。最短撮影距離30cmで寄りは得意ではありませんが、フィルター径67mmで手持ちのフィルターを使い回しやすいのはメリットです。

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